| チャップリンやバスター・キートンの作品はドタバタの中にもペーソスというか悲哀というものがある。しかし、ハロルド・ロイドのこの作品にはそれがない。しかし、それこそがハロルド・ロイドの持ち味なのだろう。“ロイド眼鏡”という名前にまでなったまん丸の眼鏡が人のよさそうな顔を飾り、決して物事を悪く考えないまっすぐなキャラクターは全ての人から好感を獲得する。
映画の中では間抜けな男として描かれ、みんなから馬鹿にされるわけだけれど、映画を観ている側にとっては彼のまっすぐで正直な性格が手に取るようにわかり、しかも根性が座っているところもしっかりと描かれているので、いつかはきっと成功すると信じることができるのだ。
これを観ていると、このハロルド・ラムというキャラクターはこの時代の“アメリカン・ボーイ”のまさに典型と言うか、理想像という気がしてくる。非常に楽観的で頑張り屋で、周りの人にやさしく、正直な人物。アメリカの典型的な人物と言えば“アンクル・サム”といわれるが、アメリカの典型的な若者はハロルド・ラムでいいのかもしれない。
今から見ると、鼻白いような正直さではあるけれど、決してめげずに、信じて行動することが成功につながるという話として見ると、どこか勇気付けられる気がする。スラップスティック・コメディはどうしても自虐的なギャグが多くなってしまうものだが、ハロルド・ロイドはそのような自虐的なギャグの中でも明るさを失わず、周りの人を明るくさせる。
確かにいま映画として見るとキートンやチャップリンの作品のほうが面白いが、これもまた一つのあり方である。「古きよき」と行っていいのかどうかわからないが、生きていない時代、生きていない場所へのノスタルジーをくすぐるという不思議な作品である。
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