| この作品、前半は非常にいい。姉の臓器移植のために奔走する弟を中心としたスピード感ある展開の中で、誘拐計画が立てられ、それがひとつのサスペンスを呼ぶ。そして、誘拐が実行されたからもまだ展開に力がある。しかし、その後の後半部分からはスピード感が失われ、魅力が減じてしまう。後半部分では前半では存在すら感じられなかったソン・ガンホが主役となるのだが、この主役の交代によってプロットの中心がぼけ、観客と映画との間に距離が生じてしまっているように思える。
おそらく、製作者の狙いとしては、前半で観客を引き込み、後半でじっくりとそこに描かれていることの意味を考えてもらおうとしているのだろう。そのためにペースをゆっくりにして間を取りながら、しかし観客の目が離れないようにインパクトの強い残虐なシーンを前半よりも増やしている。
その狙いはある程度当たっている。観客はこの後半部分の展開から“復讐”ということが持つ意味を考えざるを得ない。シン・ハギュン演じるリュウにとっての復讐と、ソン・ガンホ演じるドンジンにとっての復讐、同じ出来事に対する感情であるにもかかわらず、この2人にとって物事の見え方はあまりにも違う。復讐というものはひとりあるいはひとつの価値観に立つ複数人の視座から見た出来事に対して行われるものである。復讐の対象となる人(あるいは人々)からどう見えいているかということは、復讐する側にとってはまったく意味のないことだ。復讐とはそのような理性を奪い、激情に身をゆだねることによってなされるのである。
この後半部を見ると、そのことが痛いほどよくわかる。そしてもう一人ペ・ドゥナ演じるユンミにとっての復讐もしかりである。そして、その復讐はもちろん無意味であり、復讐が建設的であることなどなく、復讐するものにとっても利は何もない。そのことは十分に伝わってくる。
しかし、それだけのことを伝えるために1時間を費やすのは非建設的すぎる。オチというか最後の意外な展開も含めてこの作品は少しくどすぎる気がする。そこまで親切に説明しなくても観客はそこで語られていることを理解できる。親切すぎる説明は物語の展開を邪魔し、全体を冗長な印象にしてしまう。
この監督は映像によって語る技術に非常に長けているのだから、その自分の技術を信じて言葉を使うことなく語りかけていけば、物語の世界観も、スピード感も損なわず、メッセージを伝えることが出来ると思うのだが。
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