| この作品に賛否両論あるだろうことは想像に難くない。おそらくウディ・アレンの映画が好きな人やミュージカルが好きな人はこの映画をあまり楽しめないのではないか。この映画にはウディ・アレンらしい皮肉があまりないし、ミュージカルという形態をとった分ウディ・アレンらしいスピード感も失われてしまっている。そしてミュージカルという面では、ここはウディ・アレンらしさが入り込んでいて、ミュージカルに対する憧れとおちょくりの両方がない交ぜになって今ひとつミュージカル的な世界観が出来上がってはいないからだ。
しかし、ウディ・アレンにもミュージカルにも特に思い入れがないという人にとってはこれは、かなり楽しめる映画ではないか。かく言う私もその一人だが、この映画にはウディ・アレンのいい部分(言い換えるなら一般受けする部分)が十全に込められていると言っていいと思う。
ウディ・アレンとは根本的に喜劇作者であり、たとえ作風が陰鬱であっても、そこには笑いがある。その笑いが理解できないという部分も大いにあるのだけれど、この作品ではその笑いがストレートに表現され、わかりやすく面白いネタがちりばめられている。そして物語のほうも比較的素直で、幸せな気分になれる物語になっているのだ。
もちろんその分、含蓄は減ってしまうわけだが、それでもミュージカル部分にはミュージカルをおちょくるような違和感をそこに潜ませて、観客にメッセージを送る。その違和感の原因は典型的なミュージカルが描く紋切り型のステレオタイプを裏切ることにあるのだろう。そしてそれは非常にニューヨーク的であるということでもある。それは、さまざまな人が登場する一番最初のミュージカルシーンに現れている。それはまさにニューヨークのミックスされた文化の象徴であるのだ。そして、途中ではタクシーの運転手が(おそらく)ヒンディー語で歌い、最後はマルクス兄弟に扮した人たちがフランス語で歌う。
この何かぐちゃっとした感じが私には非常に心地よかった。富豪一家が主役ではあるけれど、彼らは少々冷笑しつつ、そこにある作り物ではない幸せを眺める。共和党にまつわるエピソードにはウディ・アレンらしい強烈な皮肉(この映画の製作会社であるミラマックスは93年に共和党の大きな支持者であるウォルト・ディズニー・カンパニーに買収されている)も込められていて、この主人公たちに対する視線もなんだか単純ではないということがわかる。
このような複雑さのうえにシンプルな物語が乗っているというのがこの映画の一番のよさなのだろう。最後はクリスマスが舞台にもなるし、クリスマスに見るにはいい映画だ。
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