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やさしい嘘

★★★星星

2006/10/8
Depuis Qu'Otar est Parti...
2003年,フランス=ベルギー,102分

監督
ジュリー・ベルトゥチェリ
脚本
ジュリー・ベルトゥチェリ
ベルナール・レヌッチ
撮影
クリストフ・ポロック
出演
エステル・ゴランタン
ニノ・ホマスリゼ
ディナーラ・ドルカーロワ
テムール・カランダーゼ
preview
 グルジアのトビリシに暮らすおばあちゃんと暮らすアダは母親とは折り合いのあまりよくないおばあちゃんの世話をよく焼き、今日もパリに住む叔父からの手紙を読んであげていた。おばあちゃんは息子のことが大好きでいつも手紙や電話を心待ちにしていたのだ。
  ソ連から独立を果たした小国グルジアの人々の日常を描いた佳作、どこに行っても変わらない人間同士のつながりを描く。主演のエステル・ゴランタンは85歳でデビューし、この作品当時は90歳。
review

 おばあちゃんは遠くに暮らす息子のことが大好きで、一緒に暮らす娘とはあまり折り合いがよくない。娘のほうも母親とは距離を保ち、孫娘に世話をほとんど任せている。こんな関係がこの物語の出発点である。この関係はなかなか難しい。娘は母親を愛し、母親のことを思っているのだが、おばあちゃんのほうはその気持ちにこたえようとせず、息子のことばかりをいう。それによってすこしこのおばあちゃんがわずらわしいという娘の気持ちがわかってしまう。それがこの物語をどうもしっくりこないものにしてしまっているのではないか。
  この映画の眼目は「息子の死をおばあちゃんに隠す」ことである。老い先長くないおばあちゃんにわざわざつらい知らせを教えるよりも、何とかごまかして幸せなまま暮させてあげたいという娘の真心から出たものであうる。したがってこの物語が成立するためいにはおばあちゃんと娘の関係がしっかりと描かれ、観客がその時のおばあちゃんの気持ちやその娘の気持ちをしっかりと捉えられることが重要になるはずだ。
  しかしこの映画はそこが今ひとつよくないのではないか。3人の関係の全体像はつかめるし、3人は愛し合い支えあって生きているということは映画から伝わって来はするのだけれど、それぞれが抱える感情というのは今ひとつ描ききれていない。娘の母親に対する気持ち、あるいは母親の娘に対する気持ち、これを言葉ではなく映像によって表現しようとしているのだと思うが、それが今ひとつ成功していないのだ。
  そのため、言い争ったりあるいは単に会話しただけの、その後の沈黙が息苦しい。本来ならばその間は観客が感情を反芻し、意味を読み取る時間であるはずなのに、どうも退屈なだけの時間になってしまったのではないだろうか。

 とはいえやはりそれなりの面白みもある。まずは日本からはほとんど情報が入らないグルジアという国、その国について知ることができたし、90歳のエステル・ゴランタンの演技もおもしろい。そしてグルジアという国の風景が非常に印象に残る。
  退屈といえば退屈だが、どこの国のどこの人にも、日本で映画を観ている自分と同じ暮らしがある。そんなシンプルなことを考えさせてくれる映画ではある。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: フランス

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