| これはとても穏やかでいい映画だと思う。物語の中心にあるのはもちろんバンドの話。しかし、青春者にありがちなメンバー間の争いやステージに至るまでに立ちはだかる大きな障害というモノはない。4人は着実に練習を重ね、ステージへとすすんで行くのである。 しかし、もちろんそれだけでは退屈してしまうので、いろいろと小さな事件は起きるし、最後にはちょっとした危機も訪れる。それによって観客を映画に引き込んでいることは間違いない。
とはいえやはり、全体を見て見るとすごく穏やかな映画という印象は強い。山下敦弘は前2作でも淡々とした作品を撮っているから、これがこの人の作風ということなのだろう。結構話題性のある、しかも青春映画なのにこの穏やかさというのはかなり独特なものであると思う。おそらく興行的の面から見るとこの監督のチョイスは決して最高といえるものではなかったと思うが、個人的には非常によかったと思う。
何がいいと行って、この作品からは彼女たちの日常が滲み出してくるからだ。彼女たちは確かにバンドに青春をかけている。しかし、それは決して必死なものではなく、いくつもある青春の要素のひとつでしかないのだ。ちょっとした恋愛や家族のことなどもさらりと織り込まれ、彼女たちの日常が描かれる。
そのような意味で私がすごくいいと思ったシーンがある。それは、本番前日の夜、練習に集まった4人が部室でそれぞれに好きなことをやっているシーンだ。響子は携帯をいじり、望は耳掃除をし、恵はギターのコードを確認している。ソンはその3人をかわるがわる見て、ふらりと部屋から出て行く。そこには会話もなく、視線が交わされることもない。しかし、そこにはよそよそしい空気もなく、不必要な親しさもない。これを見ながら、「ああ、高校生くらいの友だちとの関係ってこういうモノだったよなぁ」などと思う。なんとなく一緒にいて、別に何かを一緒にやっているわけではなくてもなんとなく安心する。このシーンにはそんな空気が非常によく出ている。
ここで起きる出来事はすべて本当にたいしたことではない。人生に大きな影響を与えることは決してないだろう。しかし、夜中の学校の屋上で誰かが言うように決して忘れることもないだろう。青春の記憶として強く記憶に残る。
これだけ境遇が違う4人はそれぞれ異なった人生をこれから送るに違いない。しかし、みながこの記憶を持ち続けるし、それはふとした時に財産になるかもしれない。そして、大人の視点からのつまらない言い方をすれば、彼女たちはこのこととそれにまつわる周囲の人たちの関係からいろいろなことを学んでいるのだ。
そして、そこには彼女たちとまわりの人たちとの暖かな関係も重要なものとしてある。なんとなく感じられる温かみ、それはここに登場する全ての人が持つ「思いやり」から来るものではないか。当たり前のもののように存在しているその「思いやり」が実は非常に大事なものであるということをこの作品から感じたい。
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