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ニューヨーク・ドール

2006/6/1
New York Doll
2005年,アメリカ,79分

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          ★★★★星  
     
 
 LAのファミリー・ヒストリー・センターに勤める初老の男アーサー・ケイン、彼は実は「音楽史上、最も騒々しいバンド」のひとつとされるニューヨーク・ドールズのベーシストだった。
  1970年代の前半にわずか3年の活動で解散し、現在のパンクロック、グラムロックに多大な影響を言われる伝説的なバンドであるニューヨーク・ドールズのベーシスト、アーサー”キラー”ケインの半生に迫るドキュメンタリー。
監督 グレッグ・ホワイトリー
撮影 ロデリック・A・サンティアーノ

出演 ニューヨーク・ドールズ
     アーサー・ケイン
     デヴィッド・ヨハンセン
     シルヴェイン・シルヴェイン
     モリッシー
     イギー・ポップ
     ボブ・ゲルドフ
     ミック・ジョーンズ

 

 

 

 

 

 私はこの“ニューヨーク・ドールズ”というバンドのことをまったく知らなかった。しかし、活躍した時期と彼らのサウンド、ビジュアルを見れば、彼らがセックス・ピストルズなどともにパンクやグラムロックの先駆けであったことは推測できる。
  そして、この映画はまずそれを証言する。ロックなどの音楽にある程度の知識を持っている人なら知っているような有名人(モリッシーやイギー・ポップ)が登場し、彼らの「伝説」について語るのだ。
  そして、そこで語られるニューヨーク・ドールズと、現在のアーサー“キラー”ケインの対比がまず非常におもしろい。この映画は敬虔なモルモン今日ととして働きながら貧しい生活を送っているアーサーを発見した時点で成功はほとんど約束されたと言っていい。それはただ単にその対比がおもしろいというだけでなく、その物語がわれわれの予想をさらに裏切って行くからだ。
  ドラッグや酒に溺れたロッカーが改心して敬虔な宗教者になる。そんなシノプシスだけを見ると、これは非常に道徳的な物語なのではないかと予想させるが、実はそうではない。確かにアーサーは宗教と出会って救われたが、彼は自分の過去を否定するわけではない。過去の自分を受け入れつつ、新たな自分も受け入れる。そんな心持ちに彼はありながら、バンドが再結成することを夢見るのである。バンドを再結成したいという夢は、無私の望みではなく、そこからいくばくかの利益を得たいと願っているに違いないのだ。彼は世捨て人ではない。宗教に救われはしたが、現世の欲望を持ち続ける人間なのである。
  その生臭さがこの映画をおもしろくする。彼は決して欲深くはないが、悟りを開いた聖人でもない。それはつまりごく普通の人間であるということだ。ごく普通の人間であるアーサー・ケインが普通の人は経験できないような(と彼自身も言っている)“スター”という立場を経験し、そこから凋落する。そんな数奇な運命をどう受け入れるのか、そんな話だ。

 そして、この映画がさらにおもしろいというか、不思議なのは、この映画の監督が彼のモルモン教のホーム・ティーチャーであるということだ。そして、その監督はアーサーに再結成の話が転がり込んだことを聞いて彼の映画を作ることにしたというのだ。そのような行動の仕方は私たちがイメージする宗教とどこかずれているように思える。宗教なのに、すごく「普通」なのだ。それは物事をすごく“俗に”捉えているということだ。
  この映画は決して宗教を宣伝するような映画ではないが、そうではないことで逆にモルモン教という宗教に興味が沸いてきた。