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ベルリン、僕らの革命

2006/4/3
Die Fetten Jahre Sind Vorbei
2004年,ドイツ=オーストリア,126分

監督
ハンス・ワインガルトナー
脚本
ハンス・ワインガルトナー
撮影
ダニーラ・ナップ
マティアス・シェレンベルク
音楽
アンドレアス・ヴォドラシュケ
出演
ダニエル・ブリュール
ユリア・イェンチ
スタイプ・エルツェッグ
ブルクハルト・クラウスラー
preview
 15年来の親友であるヤンとピーターは夜中に金持ちの家に忍び込み、めちゃくちゃに模様替えをし、「贅沢は終わりだ」などと書き残すというゲリラ活動をしている。その2人の住むアパートにピーターの恋人のユールが転がり込んでくる…
 “革命”をテーマにし、思想的な冒険も展開される硬派の青春映画。『グッバイ・レーニン!』のダニエル・ブリュールが主演。
review

 どんな映画にも“スリル”が必要だ。スリルは不安と紙一重であり、不安は恐怖と紙一重のところにある。映画の“スリル”は観る人の不安感を煽り、人々をひきつける。ホラーであればそれはわかりやすく身に危険が迫るという“恐怖”であり、恐ろしさがそのままスリルとなる。ドラマの場合は、悲劇が起こるかもしれないという“恐怖”がスリルとなって人々をひきつける。必ずハッピーエンドに終わるラブコメでも、もしかしたら悲劇に終わるかもしれないというスリルがあるからこそ、そのハッピーエンドに人々は安心するのだ。
 そして、この映画はその「悲劇が起きるかもしれない」という恐怖と「ハッピーエンドに終わるかもしれない」という期待が非常にバランスよく表現されることでおもしろいドラマになっている。
 そして同時に“恐怖”が映画のテーマのひとつとなっている。この作品の中で主人公のヤンは“恐怖”について語り、ブルジョワたちに“恐怖”を与えることがその行動の目的であると語る。
 そして、そのヤンたちの標的となったハーデンベルクは彼らのことを“テロリスト”だという。“テロリスト”とは文字通り恐怖を与える人間たちのことである。つまりハーデンベルクのいうことはまったくその通りであり、彼はその言葉によって彼らを批判しようとしたにもかかわらず、結果的には彼らが意図どおりの結果を得ていることを肯定してしまうことになった。
 “テロリスト”は今もっとも恐れられ、悪の代名詞のように使われている言葉だ。“恐怖”によって人をコントロールしようというやり方はいつの時代にも批判されるし、人権が最高の価値を持つものとされる現代においては、内心の自由を脅かす“恐怖”は最も忌むべきものである。しかし、だからこそ“恐怖”は抵抗の最も有効な手段ともなりうる。恐怖が効果的であるからこそ、権力はそれを使わせまいとするのである。
 しかし、考えてみれば権力もまた“恐怖”を利用して人々を統制している。犯罪に対する懲罰も、人々の懲罰に対する“恐怖”を利用して犯罪を抑制しようとするものである。
 “恐怖”をめぐる物語は奥が深く、しかも恐ろしいから人々は語りたがらない。だから映画という安全なフィクションの世界で恐怖を語るというのは非常に意義深い。闇雲に人々を怖がらせるのではなく、恐怖がどのような効果をもたらすのかを擬似的に体験させること、それによって“恐怖”がいかに人々と世の中をコントロールしているかがわかるのだ。それを考えれば、彼らがなぜ“恐怖”を利用して革命を起こそうとしているのかもわかる。それが正しいかどうかは別にして。

 ピーターが劇中で言う「拳銃で問題なのは引き金を引く人間だ」という言葉、この言葉は非常に重い。システムを利用して金儲けをする人々が貧しい人々をさらに貧しくさせている。悪いのはもちろんシステムだが、それを利用する人間がいなければ、悲劇は起こらない。どのようなシステムにもいい面と悪い面がある。現在のシステムは人々に自由を保障する代わりに、搾取を黙認している。私たちはその自由を守るために引き金を引くのか、それとも自由を犠牲にして人々に「銃を捨てよ」とうったえるのか、この物語が問いかけるのはそんなメッセージだ。
 もちろん、みなが銃を捨て新たなシステムが出来上がっても、それでみなが幸せになるというわけではない。そのシステムにもいい面と悪い面がある。しかし、ヤンが「今のシステムは熱しすぎている」と語るように、システムは時間がたつにつれ悪い面がより強く出てきてしまう。システムは変わっていかなければならないのだ。彼らは失敗するだろう。しかし何かを変えようとすることは必要だ。一人の人間の気持ちを動かすだけでも、目の前で困っている一人の人を救うだけでも、世の中は少し変わるのだから。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: イタリア

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