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次郎長三国志 第六部 旅がらす次郎長一家

2006/3/13
1953年,日本,104分

 
            
     
 
 甲州猿屋の勘助を斬って兇状持ちとなった次郎長一家は清水に戻ることも出来ず、旅がらすとなる。次郎長の手配書が出回る中、次郎長の女房お蝶が病気になり、落ち着ける場所を探していた。そんな時石松が以前に世話してやった力士久六がやくざとして売り出していることを思い出す…
 マキノ雅弘の『次郎長三国志』シリーズの第6作。兇状持ちの次郎長一家の旅は暗く、シリーズの中でも珍しく暗い雰囲気の作品になっているが、後半になって越路吹雪が登場し、雰囲気は一転。
監督 マキノ雅弘
原作 村上元三
脚本 松浦健郎
撮影 飯村正
音楽 鈴木静一

出演 小堀明男
    河津清三郎
    田崎潤
    森健二
    田中春男
    石井一雄
    森繁久彌
    小泉博
    若山セツ子
    久慈あさみ
    越路吹雪
    長門裕之
    藤原釜足

 

 

DVD未発売・ビデオ廃盤

 

 

 

 この作品の前半部分は、次郎長三国志シリーズではほかにはない、というよりもマキノ雅弘の作品でも他に無いほどに暗い雰囲気になっている。病気のお蝶とともに着の身着のまま、世間の目を避け、眠るところもままならぬ旅の日々、それは暗くもなるだろうが、やくざもんが兇状持ちになってここまで暗くなるというのも不思議なものだ。
 そして、その暗さがピークに至るのは久六のたくらみから逃れたところで、お蝶が死に瀕する場面である。石松は久六のようなところに連れて行ったのは自分の責任だと言って、一人久六のところに行こうとするが、お蝶に止められる。そして、みなは泣きじゃくる。この泣きじゃくるシーンが本当に異様に長い。観ているほうはその暗さと長さに暗い気分になるやらなにやらで観ているのもつらくなり、これが本当にあの次郎長三国志か、マキノ雅弘かという感覚に襲われてしまう。
 これはこれで狙いなのかも知れないが、やはり『次郎長三国志』といえば義理と人情の世界の痛快な物語だから、どうもしっくり来ない。

 しかし、彼らが石松の幼馴染の七五郎に助けられ、七五郎の家に行くところで、女房お園を演じる越路吹雪が登場し、雰囲気は一変する。
 この作品では、越路吹雪が本当に素晴らしい。マキノのキャラクター設定も見事だが、それを演じる彼女の仕草や表情がさりげないながらも、感情をスッと表現して見せるその演技力には脱帽する。
 彼女の献身に傷心の次郎長一家が救われるように観ている私たちも彼女に救われる。繰り返される“権現様”へのお参りのシーンは特にいい。この家の前にある権現様にお参りする歩き方やわずかなセリフで、越路吹雪はその時のお園の感情を見事に表現する。
 越路吹雪はマキノにも気に入られたのか、もともとそういう設定だったのか、この後の第七部第八部にも出演。さらに、これが好評だったためかどうかはわからないが、後年同じ東宝で撮られた『次郎長意外伝』シリーズにも出演した(このシリーズは主役は灰神楽の三太郎を演じた三木のり平だが、『次郎長三国志』と同じく、次郎長を小堀明男、石松を森繁久彌、関東綱五郎を森健二が演じている)。

 もう一人の次郎長一家新加入はマキノ雅弘の甥の長門裕之、越路吹雪と比べるとはるかに地味だが、フレッシュな魅力を発揮して次の第七部では主役級に抜擢されている。
 この作品の結末も、次はどうなるんだと気になる展開、途中では暗さで観客を辟易させても、最後にはうまく観客を次の作品へと引っ張って行く辺りはさすがのマキノ節という気がした。