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散り行く花

2006/3/9
Broken Blossoms
1919年,アメリカ,60分

 
            
     
 
 仏教の教えを広めるため中国からイギリスへと渡った中国人青年、失意のうちに阿片屈に通うようになった彼には想いを寄せる美しい少女がいた。その少女ルーシーはボクサーの父親の暴力に苦しめられていた…
 D・W・グリフィスが永遠の少女リリアン・ギッシュを主演にしてとったメロドラマの古典。サイレント映画らしいおもしろさに溢れた作品。
監督 D・W・グリフィス
原作 トーマス・パーク
脚本 D・W・グリフィス
撮影 G・W・ビッツァー

出演 リリアン・ギッシュ
    リチャード・バーセルメス
    ドナルド・クリスプ

 

 

 


散り行く花

イントレランス/散り行く花

散り行く花


 


D・W・グリフィス傑作選

 

 

 

 リチャード・バーセルメスが演じているのが中国人青年であるという設定には少々面食らうが、それを除けば非常に見やすく、おもしろい作品である。サイレント映画であり、インタータイトルもかなり控えめに挿入されているに過ぎないのだが、映像を観ているだけでも非常にわかりやすく、離している口元を移しているだけの映像から、そのセリフが聞こえてきそうなリアリティがある。
 それをささせるのは、なんといってもリリアン・ギッシュとドナルド・クリスプの演技である。リリアン・ギッシュは幼い少女の役だが、この時すでに22歳、しかしどう見ても少女にしか見えない、まさに永遠の少女の面目躍如である。そして彼女はただ見た目が幼いだけでなく、その表情で抜群の演技をする。登場したところから、父親に対する恐怖や絶望などを大げさすぎるとも思える表情で表現するのだが、それが非常にいい。
 サイレント映画では、言葉ではなく映像で説明しようとするために演技が過剰になりすぎだが、リリアン・ギッシュの演技は大げさではあるが過剰ではない。わかりやすくはあるが、そこにリアリティが見られる。
 そしてそれは父親役のドナルド・クリスプにも言えることだ。表情を歪ませ、大きな身振りで表現するその感情は、セリフなどなくとも読み間違えることがないほどに見事に表現されているのだ。
 リリアン・ギッシュが活躍したのは1910年代から20年代で、いまではほとんど見られることはないが、この作品をはじめとするグリフィス作品を見ると、彼女がただのイコンではなく優れた女優であったということがよくわかる。映画がサイレントの形で完成されたものとなっていった1920年前後のグリフィスとリリアン・ギッシュの作品、それはひとつの芸術の境地としていまでも十分に見る価値がある。

 さて、そのグリフィスだが、この作品では、シーンに応じてフィルムの色合いを変えているようである。室内のシーンではセピア、屋外では青、回想シーンでは紫といった具合にである。白黒のフィルムにこのような変化を加えることで、単純にずっと白黒で語られる映画よりもわかりやすくもなるしおもしろくもなる。
 それ以外にも、クロースアップの使い方や、ボクシングシーンと中国人青年の部屋のシーンとの交互モンタージュなど、サイレント映画でいかに物語を伝え、観客を引き込むかが非常によく考えられたつくりになっているのは、さすがはグリフィスという感じである。
 世界の映画史においてその初期に燦然と名を輝かせるリリアン・ギッシュとD・W・グリフィス。このふたりの作品は改めて見るとやはり名作であると感じずにはいられない。