更新情報
上映中作品
もっと見る
データベース
 
現在の特集
サイト内検索
メルマガ登録・解除
 
関連商品
ベストセラー

CODE46

2006/1/10
CODE 46
2003年,イギリス,93分

監督
マイケル・ウィンターボトム
脚本
フランク・コットレル・ボイス
撮影
アルウィン・H・カックラー
マルセル・ザイスキンド
音楽
デヴィッド・ホームズ
出演
ティム・バートン
サマンサ・モートン
ジャンヌ・バリバール
オム・プリ
エシー・デイヴィス
preview
 共通する遺伝子を持つもの同士の生殖を禁じた“コード46”が制定された未来社会。社会は砂漠化した“外”と守られた都市社会である“中”とに分けられ、その行き来はパペルと呼ばれる許可証によって厳格に管理されていた。そのパペルを管理するスフィンクス社の調査員ウィリアムは偽造の調査のために上海に行く。そこで彼は従業員のひとりマリアが犯人であると見抜くが、なぜかウソの報告をする…
 マイケル・ウィンターボトムが近未来の遺伝子社会を描いたSFドラマ。科学と人間の心の相容れない部分を描こうという野心が感じられる。
review

 わたしはマイケル・ウィンターボトムの作品はあまり好きではない。それは彼の作品のこれ見よがしにリアルらしい映像に原因があると思う。『ひかりのまち』の似非ドキュメンタリー的映像に辟易し、どうも肌に合わないと実感した。
 しかし、この作品はおもしろかった。その理由のほとんどはシナリオのよさにあると思うが、このSFという設定が非現実的な設定を作ったことによってウィンターボトムの鼻持ちならない「リアルっぽさ」が打ち消されたという要因もあるのではないかと思う。そもそもウィンターボトムの映像世界が好きという人には、「なぜSFなんかに手を出したんだ…?」という疑問がわくだろうことは想像に難くないが、私はこの設定によってこの作品は救われたと思う。
 しかしもちろん、テーマ的な部分ではウィンターボトムらしさも発揮される。この作品はSFであるとはいえいわゆる空想科学的なものではなく、あくまでも現在の現実にひきつけられる問題としてテーマが設定されている。それは遺伝子と人間の心の関係であり、さらに大きくいえば科学と心の問題である。あるいはひとの出会いと運命の問題。
 上海でウィリアムがひと目見ただけのマリアに魅かれたのは何故なのか、という疑問の背後は人間は別の人間の何に魅かれるのかという根本的な疑問がある。この物語は魅かれあったふたりがコード46という規則に邪魔される悲劇なのか、ふたりがこのように魅かれあうからこそ、そこからくる弊害を防ぐためにコード46が存在するのか。それは人間同士が魅かれあうのは遺伝子によるものなのか、それともそれとは別の“心”の問題なのかということと同じである。
 ウィリアムがマリアと遺伝子的なつながりがあると知ったあとも彼女と関係を続けようとする、あるいは改めて関係を築きなおそうとすること。それは彼がコード46という忌避に逆らってでも彼女を求めたということなのか、それとも遺伝子的なつながりの存在を知ったことによって彼の回帰衝動が強まったということなのか、という疑問につながる。そして、それはつまり彼は遺伝子に支配されて行動したのか、それとも遺伝子に逆らって行動したのかという疑問でもある。

 この物語はそれらに答えを与えていない。それに答えるということは遺伝子と心の関係についての答えを出すということである。それに答えないということは、その間の関係を否定することである。ウィンターボトムは遺伝子と心の関係をほのめかしながら、最終的にはその関係を否定している。それはもちろん、その関係が明らかではないからだし、それに答えることは、遺伝子という身体の科学が心を支配していることを認めることになってしまうからだ。ウィンターボトムはおそらく心がそのような物理的な法則から生まれるものに過ぎないことを否定したいのだろう。だから彼は回答を回避する。
 ただし、その関係をほのめかすことだけでも、それを考えることにつながる。今後科学が進歩し、遺伝子社会が本格化し、近親婚という概念が根本的に変化したとき、私たちはそれをどう捉えるのか。それは現在において、近親婚に対する禁忌にどのような意味があるのかということを問い直すことにつながらざるを得ない。その時私たちは本当に人との出会い、そして人間同士が魅かれあうということを純粋に“心”の問題と考え続けることが出来るのか。
 それは、科学と心とがどんどん近接しつつある現代にこそ問われるべき問題であるように思える。ウィンターボトムは回答を回避したし、私にもそれに答える術はないのだが、それに答えようとする動きは着実に進んでいる。そしてそれは、心を身体の科学によって数値化するのではなく、逆に身体を心によって主観化する動きとしても存在している。
 遺伝子と心のせめぎあい、それを身体と心のせめぎあいに置き換えるとすると、それは脳と心の関係に行き着く。心から脳を主観的に分析する科学が成立しえれば、ウィンターボトムでも受け入れられるような遺伝子と心の関係がつかめるのかもしれない。
 SFは常にその時々の最新の科学的知識の成果を先取りするが、この作品も、遺伝子が心を支配しているということを否定することで、従来の脳から心を分析するあり方を否定し、心から脳を分析するという新しい可能性に光を当てようとしているのかもしれない、などと思った。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: イギリス

ホーム | このサイトについて | 原稿依頼 | 広告掲載 | お問い合わせ