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『悪名』シリーズといえば、勝新演じる八尾の朝吉の格好よさもさることながら、田宮二郎演じるロートルの貞、そしてその弟の清次のコミカルさとそのふたりの間に存在する暖かな空気が単なる極道ものを超えた面白みを生んで、それが大きな魅力となっているわけだが、この作品ではその田宮二郎演じる清次があまり登場してこない。終盤こそいつものように朝吉とコンビを組んで大暴れという感じだが、前半から中盤にかけては画面に登場することさえめったにない。
その代わりに登場するのが長門裕之演じる粟津ということになる。この長門裕之はすごくいい演技をしていて、見事に勝新とはる迫力を持っている。だから、このふたりのドラマという形で見ればこの作品は面白い。戦場で中隊長と一等兵という関係で、一方は大学出の一通りのヤクザの若旦那、一方はさすらいの一匹狼の極道者、ふたりの関係は仲間意識とライバル心と価値観の違いとさらには一人の女をめぐる微妙な関係と、様々な関係が交錯し、複雑さを増して行く。そしてそのふたりを丸ごと取り込むヤクザの世界と対決するという構図はドラマティックだ。
しかし、『悪名』シリーズに期待しているのはそのようなものとはちょっと違うのではないかという気もする。極道の世界というわれわれの日常とはかけ離れた別世界の話ではなく、ヤクザ者ではあるけれど、われわれとたいして変わらない、われわれの日常とつながった人々の話、それが『悪名』シリーズに期待するものなのではないか。そのわれわれの日常と極道の世界をつなぐべきキャラクターとして存在しているはずの田宮二郎が機能しないことでこの作品は、そのような極道の非日常世界に偏った作品になってしまった。僅かにラーメンの屋台を曳くオヤジだけがわれわれの日常と極道者の世界を細い糸でつないでいた。
そのように、隔絶した世界を描いているという印象があるから、終盤に朝吉と清次が暴れまわる場面になっても、今ひとつふたりと一緒になって暴れているという感じがしなかった。
勝新と長門裕之が共演した極道ものの社会派劇と見れば、なかなか面白い作品だが、いつもの『悪名』の軽妙さを期待すると少々期待ハズレ。作品としての質はかなり高く、シリーズの中でも指折りだと思うのだが、好みは分かれると思う。
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