|
この作品には、フランス映画独特のクセのようなものがない。だから、監督も替えずにアメリカでリメイクが作られるなどということがおきたのだろうが、その分、フランスらしいコメディを期待してみると拍子抜けする。間抜けな銀行強盗を演じるピエール・リシャールなんかは、いかにもフレンチ・コメディらしい風貌をしているし、ジェラール・ドパルデューだってコメディ演技は上手なはずだ。しかし、この作品ではどこかあっさりしすぎている感じがする。
フランシス・ヴェベールがまず有名になったのはブロードウェイ・ミュージカルにもなった『Mr.レディMr.マダム』の脚本家としてであり、つまりそもそもアメリカの人たちに受けるようなコメディを書く才能があったし、そのような作品を好んでいたのだろうと思う。だから、監督デビュー作となったこの作品が凄くアメリカのコメディっぽくて、フランスらしさが薄く、ハリウッドにすんなりと受け入れられたというのも合点が行く。この作品とそのリメイクのあとはアメリカで『マシュー・ブロデリックの
緊・急・事・態』、フランスで『ジャガー』を撮って泣かず飛ばず、その次の『奇人たちの晩餐会』でようやくヒットを飛ばすことになる。
この『奇人たちの晩餐会』にいたってようやくフレンチ・コメディの王道とも言える笑いを取り込んで化けたということだと思うが、それは単純な古典的なフレンチ・コメディの繰り返しではなく、多分にアメリカ的なものが混ざりこんでいる。つまり、フランシス・ヴェベールはアメリカ的なものをフランスで作ってアメリカに受け入れられ、そのアメリカ的なものを今度はフランス的なものと融合させることによってようやく自分なりの形を見出したということだ。
だから、この『3人の逃亡者』の段階ではほとんどアメリカン・コメディと言っていい作りになっているわけで、フレンチ・コメディを期待してみたら、拍子抜けするというのはまったく致し方ないことだと思う。にもかかわらず、そこにはフランス的なものも入り込んでいる。アメリカ版を見ていないので、なんともいえないが、アメリカ版を見れば、そのフランス的な部分がよく見えてくるのだろうと思うが、このフランス的なものを失ってしまうったら、この作品はさらに退屈なものになってしまっただろう。
この作品はつまるところ基本的にアメリカ的なコメディに、ちょっとフランス風のスパイスといういかにもアメリカ人受けしそうな作品なわけで、それ以上ではない。ジェラール・ドパルデューとピエール・リシャールとモーリス・バリエに救われてフレンチ・コメディらしい体裁は保ったけれど、キレは今ひとつ。
そういう意味では、逆に徹底的にアメリカの笑いに徹したであろうアメリカ版のほうが完成度は高いんじゃないかという予感がする。ジェラール・ドパルデューの役をニック・ノルティがやるというのもなかなかはまり役という気がするし。
|