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スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする

2004/9/8
Spider
2002年,フランス=カナダ=イギリス,98分

監督
デヴィッド・クローネンバーグ
原作
パトリック・マグラア
脚本
パトリック・マグラア
デヴィッド・クローネンバーグ
撮影
ピーター・サシツキー
音楽
ハワード・ショア
出演
レイフ・ファインズ
ミランダ・リチャードソン
ガブリエル・バーン
リン・レッドグレーヴ
ブラッドリー・ホール
ジョン・ネヴィル
preview
 電車から降りたった一人の男がメモを頼りに一人の夫人を訪ねる。そこは精神病院を退院した人たちが滞在する下宿で、その男も1つの部屋をあてがわれ、そこでの生活を始める。しかし彼は、古いノートに細かく文字を書き込みながら母親に“スパイダー”と呼ばれていた昔を思い出すばかりだった…
 クローネンバーグがパトリック・マグラアの原作を映画化。自らの記憶に苦しめられる男の姿を幻想的なタッチで描いている。
review
 この映画はかなり異様だ。はっきり行って筋といえるようなものはない。主人公はいて、彼はデニス・クレッグという名前で、精神病院に入っていたらしくって、今は精神病院を退院した人たちが住む下宿のようなところにいる。という設定までは確かなことらしいが、そこから先は果たして何が現実で、何がクレッグの幻想であるのかは全く判然としない。
 それでも、彼が思う少年時代からの記憶がひとつの物語の筋道となって、われわれに彼が精神病院に入るようになった原因を明らかにしていくような展開を見せる。しかしそれは客観的な分析にものではなく、完全に彼一人の頭の中にある物語であるのだ。
 そして、その物語は少年の彼自身が見たことだけで構成されているのではなく、彼自身が見ているはずのないことを成人となった(つまり現在の)彼が想像上で追体験していくことによって組み立てられていったものなのである。それに気づいたときわれわれは混乱する。果たしてこれは何なのかと。 われわれはその彼の記憶/想像/幻想をもとにして彼を分析していくしかない。彼の組み立てられた記憶の齟齬からその裏に隠された「事実」なるものを探ろうとしてしまうのだ。
 そして、同時に彼にそのようなゆがんだ記憶を与えた、心理的な要因にも探りを入れようとする。優しい母親、怖い父親という典型的なエディプス・コンプレックスからスタートして、さまざまなことを考えざるを得ない。原作者が心理学者なのかどうなのかは知らないが、心理学的な素養があったほうが楽しめるサスペンスであるようだ。
 私のうろ覚えの知識では、父殺し/母殺し(もちろん心理学な意味での)というのは心理学的に重要な要素で、少年期の父親と母親の関係が成人後の欲望の問題に大きく影響するということもあったように思う。つまり、彼はどこかで欲望の形成に瑕疵があったというか、ある種の歪みが生じたということなのだろうが、詳しくはわからない。

 そして、この映画の謎は結局解けない。謎を解く鍵は、母親とイヴォンヌとウィルキンソン夫人(つまり母性を象徴する3人)にあるようだが、その先の謎解きはかなり自由である。少し明かしてしまえば、その3人は同じ人が演じているようだが、果たしてそれが同一人物であることを意味しているのかどうかはわからない。それもこれもクレッグの想像の産物であるのかもしれないし…

Database参照
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