更新情報
上映中作品
もっと見る
データベース
 
現在の特集
サイト内検索
メルマガ登録・解除
 
関連商品
ベストセラー

レイン

2004/6/17
Bangkok Dangerous
2000年,タイ,106分

監督
オキサイド・パン
ダニー・パン
脚本
オキサイド・パン
ダニー・パン
撮影
デーチャー・スリマントラ
音楽
オレンジ・ミュージック
出演
パワリット・モングコンピシット
プリムシニー・ラタナソパァー
ピセーク・インタラカンチット
パタラワリン・ティムクン
preview
 殺し屋のコンは耳が聞こえないが、仕事は優秀で、仕事を教えてくれた恩人でもあるジョーと同居していた。ジョーは利き腕である右手に銃弾を受け、それ以降荒れ気味で、元恋人で仕事の仲介役であるオームにも当り散らしていた。そんなコンのところに、香港での殺しの仕事が舞い込む。コンはその仕事を受け、香港に向かうが、そのころオームはその仕事を仲介した男にしつこく付きまとわれていた…
 香港出身のパン兄弟初の共同監督作品。トーンを落とした色調と編集のリズム感に才能を感じるが、サスペンスとしては平均点というところか。
review
 物語とプロットはなんとも浅薄というか、シンプルというか、結末に向かってとにかくまっすぐ進んでいく。「殺し屋」という主人公の設定はありきたりだし、それが耳が聞こえないというのもオリジナルであるようで実はご都合主義でしかないという気がしてしまう。
 コンとその周りの出来事が、どうも遠い世界の話であるように感じてしまうのは、その描かれている世界がまったくわれわれと関係なく、関係する可能性もない世界である。射撃場で耳の聞こえない青年が、腕利きの殺し屋に出会うという話も、彼らが友情を育むという話も、彼らの恋の話も、まったく持って現実感がないのだ。
 それはつまりこの映画の全てが夢物語であるということだ。もちろん映画とはそもそもが夢物語ではあるのだけれど、映画という装置は物語やプロットや主人公の魅力や主人公とそれを見るものとの近似性によって観客をその夢物語の中に引き込んで、それにかりそめのリアリティを与えるものであるはずだ。この映画はその夢物語である部分はそのままに、リアリティはまったく与えない。そこには悲惨さも、苦悩も、痛みも、恋焦がれる気持ちも、誰かを大事に思う心も、何も映っていない。ただただ空虚な物語が連なって、何かがあるようなそぶりを見せるだけなのである。

 その物語性の欠如と表裏一体にあるのが、この映画のスタイルなのではないかと思う。この映画のつくりは、映像も音も含めてスタイリッシュなものだと言えると思う。凝りに凝っているというものではないが、リズムよく短いカットをつないで全体にスピード感を出し、トーンを落とした感じで統一する。個々のシーンにおいても、監視カメラの映像を使ったりしながら映像に変化をつけて面白みを出している。このあたりのセンスはなかなかのものだと思う。
 その映画のリズムとスタイルは、物語の空虚さと渾然一体となってひとつの雰囲気を作り出す。それがこのパン兄弟の味ということになるのだろうが、それは流行のポップ・ミュージックのような味である。口当たりはいいけれど、後には何も残らない。ロックの反骨精神はなく、ブルースの詩情もない。 そこにいるのは多分、踊る人と踊らされる人たちだけだ。それは、この映画の登場人物も、何かに踊らされている人だということを意味するのかもしれない、などと考えてみる。

Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: タイ

ホーム | このサイトについて | 原稿依頼 | 広告掲載 | お問い合わせ