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未知空間の恐怖/光る眼

2004/5/28
Village of the Damned
1961年,イギリス,78分

監督
ウォルフ・リラ
原作
ジョン・ウィンダム
脚本
ウォルフ・リラ
スターリング・シリファント
ジョージ・バークレイ
撮影
ジェフリー・フェイスフル
音楽
ロン・グッドウィン
ラルフ・アーサー・ロバーツ
出演
ジョージ・サンダース
バーバラ・シェリー
マーティン・スティーヴンス
ローレンス・ネイスミス
preview
 アラン・バーナード少佐が妹の夫ゴードン・ゼラビー教授に電話中、電話が突然切れた。そのとき、ゼラビー教授の住む村の住人たちがいっせいに失神し、電話が普通になっていたのだ。不審に思ったアランは村へと向かい、止まっているバスを見に行った警官までもが失神するのを眼にした。そして、陸軍の調査チームがやってくるが、4時間後彼らは突然眼を覚ました。しかし、その2ヵ月後、村の数人の女性が同時に妊娠していたことが判明する…
 ジョン・ウィンダムの『呪われた村』の映画化。続編も作られ、1995年にはジョン・カーペンター監督でリメイクもされたSFホラーの古典的名作。なかなか怖いです。
review
 60年代初めの作品だけあって、白黒だし、特撮もたいしたことはない。つまり、SFとしてのリアルさ(つまり、SF的世界として人々が想像している世界との一致度)からいえば今のSFやホラーとは比べ物にならない。
 しかし、この映画には底知れぬ恐怖がある。“光る眼”を持つ子供たちは金髪で、統率の取れた行動をして、どこかナチ(ゲルマン民族の選民思想)を思い出させるというのもあるが、彼らの行動の目的が何であるか究極的にはわからないというのが恐怖である。そして、彼らが誕生した謎も謎のままに進んでいくのである。SFでホラーでサスペンスという場合、謎であることが徐々に解かれていって結末に向かっていくというのが基本的なパターンであると思うのだが、この作品はよく考えて見ると謎が解けていっているわけではないのだ。彼らを取り巻く人々の彼らに対する恐怖がつのっていく様子が描かれるだけで、彼らが何者で、何をしようとしているのかはまったくと言っていいほど描かれないのだ。
 この恐怖のもとが除かれないまま物語ばかりが進行していくという展開はかなり怖い。理由のない差別や理由のない虐殺は、いつ自分に降りかかってくるかわからないだけに、恐怖以外の捉えようを仕様がないのである。

 そう考えるとこの映画は非常に示唆的なのかもしれない。生々しいナチス・ドイツの記憶(アメリカではなくヨーロッパで作られているということにも一瞥を向けておきたい)をどこかで引きずりながら、理由もなくわれわれを操作し、殺しさえする人々の出現を描く。それは恐怖のフラッシュバックであるのかもしれない。
 そして、その恐怖は自己への反省につながる場合もあれば、別の対象に対するいわれのない差別や迫害につながる場合もある。主人公のゴードンは彼らに対してそのような差別や迫害を避けようと苦慮した。彼らが「悪」であると言い切れるのかどうか悩んでいたのだ。善と悪という恣意的で不安定な価値判断によって人を殺したり、迫害したりすることが取り返しのつかない結果を生んでしまうことがあると言うことを彼は知っていたのである。
 これは現代の世に非常に考えさせられることではないか。自爆テロを繰り返すイスラム原理主義者は、「悪の枢軸」は果たして「悪」なのか…
 この映画の結論は、そのような観点から行くと納得しがたいものではあるのだが、それが納得しがたいというのも考察の対象になるような気がする。続編やリメイクを見て、その違いを考えて見ると面白いのではないかと思う。
Database参照
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国別・年順: イギリス

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