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アバウト・ア・ボーイ
2004/3/29
About a Boy
2002年,アメリカ,100分
ロンドンに住む38歳のウィル・フリーマンは父親がヒットさせたクリスマス・ソングの印税で何もすることなく暮らしている。シングル・ペアレントの集会に紛れ込んだウィルはシングルマザーをナンパするため息子がいると嘘をつくが、そのおかげでそのナンパ相手の友人フィオナの自殺未遂の場面に遭遇し、その息子マーカスに付きまとわれることになる…
『ハイ・フィデリティ』の原作者ニック・ホーンビィのベストセラーの映画化。ダメ男を演じたら世界一のヒュー・グラントがやはりいい。
監督 クリス・ワイツ
原作 ニック・ホーンビィ
脚本 ピーター・ヘッジズ
クリス・ワイツ
ポール・ワイツ
撮影 レミ・アデファラシン
音楽 ニック・ムーア
出演 ヒュー・グラント
トニー・コレット
レイチェル・ワイズ
ニコラス・ホルト
アバウト・ア・ボーイ
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アバウト・ア・ボーイ
自分では何にもせずに印税生活なんてまったくいい身分だけれど、そのようにまったく何もやることがないからこそ見えてくるものというのもある。ウィルは自分では努力をせずになに不自由なく生活してきた。つまり彼は子供のまま大人になった。自分はなにをすることもなく欲しいものは手に入る。やりたいことをやって時間をつぶす。自分がやろうとすること(たとえばナンパ)のためならば、嘘をつくことも平気である。そんなまったくの子供である彼は完全なる自己中心主義者でもある。彼が自己中心主義であるのは、他者への想像力がまったく欠如しているからだ。悩み、苦しみ暮らしている人々への想像力が。
それはもちろん彼が何不自由なく暮らしているからなわけだが、だからといって彼に悩みがないわけではない。彼の問題は彼自身が自分の抱える悩みに対処することなく、それを無意識に押し殺して生きてきてしまったことだ。そんな悩みを解決しようと苦心しなくとも、それを無視してなかったことにしてしまえば、彼は平穏に暮らすことができる。だから彼はそんな悩みを無視して、他人に嘘をつくように自分にも平気で嘘をつく。
そんな彼が新たな自分を獲得していくというのがこの映画の物語となるわけだが、そこで現れるのが恋人となる女性ではなく、12歳の少年であるというところに面白みがある。そして、それは少年でなくてはならないという必然性もあるのだ。ウィルにとってマーカスがかけがえのない存在になっていくのは、この二人が同じように恐怖感と不安を抱えているからだ。ウィルが昔マーカスのような少年であったというのではなく、ウィルは現在マーカスのような少年なのだ。だから二人は互いから何かを引き出す。自分のコンプレックスや不安感をぬぐってくれるような要素をお互いの中に見出す。
誰しもが心の中に抱える「コドモ」な部分、それを最大限に押し広げたかのようなウィルに共感できてしまうような情けない「オトナ」のほうが私は好きだ。オトナはこんな情けない男をみて何が面白いんだ、と思うかもしれないけれど、その人は多分自分のコドモ的な部分を無意識に押し殺していて、オトナぶって、恐れを表に出さないようにして、がんばって生きている。そうやってがんばって生きることももちろんひとつの美学ではある。でも、そんな風に見える人でも、家でひっそりこんな映画を見て、ぽとりと一粒の涙を落としていたら、素敵だと思う。
ところでこの映画、アメリカ映画なんです。ヒュー・グラントは最近アメリカのイギリス人を演じることが多いけれど、この映画ではイギリスのイギリス人を演じていて、「久しぶりのイギリス映画か」と思っていたら、実はアメリカ映画。アメリカ人は(おもにWASPは)イギリスを「アメリカの51番目の州」とかいう割りに、やっぱり実はどこかで自分たちのルーツだと思っているのか、イギリス的なものを案外ちやほやする気がします。
ヒュー・グラントはそんなアメリカ人のイギリス像にぴたりとは待った色男。いうこともあけすけだけれど、どこか機転が利いている。この映画でもウィットとは言わないけれど、さらりとしたうまいクスグリが随所にあります。ラブ・コメ・キング、そして情けない男を演じさせたら世界一なヒュー・グラントは喜劇役者としての才能もかなりのもののマルチな役者である、と、思いました。