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黄泉がえり

2004/2/24
2002年,日本,126分

 
            
     
 
 熊本県阿蘇山近くのとある家で50年以上前に行方不明になった少年が少年時代の姿のままで帰ってきた。いわゆる「神隠し」とされ、調査のために厚生労働省から当地出身の川田平太が派遣されるが、その現象は少年だけではなく、次々と死んだ人がよみがえっているという報告が寄せられる。平太はそのかたわら親友の葵を訪ね、平太の親友であり葵の恋人であった俊介を葵がまだ思い切れていないことに心を痛めるが…
 梶尾真治の原作を『害虫』の塩田明彦が映画化。ファンタジックな世界観には塩田明彦の「らしさ」が感じられるが、出演者なども含めて、映画の質という点では傑作とは言いがたい。話は面白いですが。
監督 塩田明彦
原作 梶尾真治
脚本 犬童一心
    斉藤ひろし
    塩田明彦
撮影 喜久村徳章
音楽 千住明

出演 草なぎ剛
    竹内結子
    石田ゆり子
    哀川翔
    山本圭壱
    寺門ジモン
    忍足亜希子
    田中邦衛
    伊東美咲
    伊勢谷友介
    RUI

 

 

 

黄泉がえり

 

 

 
 話はとても面白いし、映画としての作り方も非常にうまい。「ん?」と疑問に思うようなちょっとしたカットが後々で「こういうことだったのか」とわかるようになっているので、観ている側としてはなんとなくわくわくしてくる。そして、群像劇という要素がさまざまなドラマを織り込むことを可能にして、単調になるのを防いでくれる(平太と葵と俊介の話だけだったらこの長い時間はさすがに乗り切れないと思う)。そして、要所要所に味のある俳優を配して、ぐっと映画を引き締めさせる。
 が、誰とは言わないけれど、何人かの役者はどうもちょっと演技が… という点があったことは否めない。最初、平太が缶ビールを飲むときに、なんともぎこちない飲み方をしていたので、「なんてこった」と思ったのだが、その後も缶コーヒーでも何でも同じ飲み方をしているのを見ると、もともとそういう飲み方をしているようなので、それはそれで面白いかもなどと思ってしまった。ほかでは特にぎこちなさを感じなかったので、草なぎ君は案外うまい役者なのかもしれない。

 ということろで、映画の内容に入ってみると、この映画は「死者」に対する人間の複雑な心理をうまく形にしていると思う。たしかに死者たちは「よみがえってほしい」(あるいは「会いたい」)という強い想念が実体化したものではあるけれど、よみがえったからといって生きている人たちは手放しで喜ぶわけではない。その人から死んでからの時間、彼らもそれなりの時間を過ごしてきた。それでも「会いたい」と願っているということは、彼らが生き返ることに意味はある、というか生き返ったことで「嬉しい」ことは確かなのだろう。しかし同時に、そう願った以外の人たちには複雑な思いを抱かせることになる。これを見事に体現しているのが山本圭壱の役どころで、彼はそれなりにうまく演じている。彼の居心地の悪さを見つめていると、この映画が投げかける本当の意味というのが見えてくる気がする。この映画は決してお涙頂戴の感動作などではない。商業映画として要請される感動路線の体裁をとりながら、より深く考える材料をも提供しているのだ。
 この映画を見て、主役のふたり以外で、強い印象を残すのが山本圭壱であるというのがそう考えさせる理由となった。そして、妙に冗長だとさえ感じられるゆったりとした映画の進み行きも、ゆっくりと感動を味合わせるという効果を狙うと同時に、そこに存在する違和感に感づかせようという意図もこめられているのではないかと思う。最後に歌うRUIの長すぎるコンサートシーンも、ラストの感動への引き伸ばしではなくて、歌うことと歌そのものによって吐き出される複雑な思いを考えさせるためのものであるのだ。

 ということを考えると、なかなか悪くない映画である。全体的に「薄い」という印象はあるが、見終わったあとに生まれてくる穏やかな感じはかなりいい。さまざまな要素を何とかまとめ上げた塩田監督の手腕のなせる業ではないかと思う。