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アイリス

2003/6/10
Wild Iris
2001年,アメリカ,93分

監督
ダニエル・ペトリ
脚本
ケント・ブロードハースト
撮影
ルネ・オオハシ
音楽
ローレンス・ローゼンタール
出演
ジーナ・ローランズ
ローラ・リネイ
エミール・ハーシュ
ミゲル・サンドヴァル
preview
 夫が自殺でなくなって以来お酒が手放せなくなってしまったアイリスは、母親のブライダル・ショップでドレスを作っている。しかしその母親のミンは孫のロニーを溺愛する一方でアイリスにはつらく当たり、文句ばかり言っている。アイリスは息子との新生活を夢見て、少しずつお金をため母親の小言を我慢していたのだが…
 大女優ジーナ・ローランズ主演のコンパクトな家族のドラマ。つくりは小さく、さすがにTV映画という感じだが、キャラクターの作り方はなかなか巧妙で家族関係や人のあり方というものについて考えさせられる作品になっている。
review
 登場人物の人物像をしっかりと作るというのは映画にとってかなり重要なこと。その人物の人物像というか人間性が変化していくこと事態がテーマになっている場合は別だが、そうではない場合は1時間半とか2時間とかいう短い時間の中でその人物像が揺らいでしまうと、映画自体が破綻してしまうことにもなりかねない。
 この映画で中心になる人物はアルコール依存症にまでなっているアイリスかと思いきや、実はその母親のミン。(*あまり見る人もいないと思うのでがんがんネタばれしていきますが、別にネタがばれてしまっても映画としての面白さにあまり違いはないような気がします) 最初はミン-アイリス-ロニーという親子三代の物語の様相を呈しながら、アイリスがアルコール依存症によってある意味で子供のようになっているため、ミンがロニーの母親的存在、アイリスはロニーと姉とでも言うべき存在になる。
 そこでミンがアイリスとロニーの世話を焼くのだが、そのミンは他人をまったく理解せず、しかもそのことを自分では気づいておらず、自分のやっていることに自信を持っている。アイリスはそんな母親にいい加減愛想を尽かしていて、それが彼女がアルコール依存症になっている原因でもあるのだけれど、この映画で重要なのは、孫のロニーに対するミンの態度。ミンはロニーの父親をあまり好いてはいなかったようで、アイリスの前で平気で「くず」というし、ロニーが父親の話をするのも嫌う。しかし、ロニーは父親のことを愛していて、父のようになりたいと思っている。そしてある夜、ロニーはミンに父親の話をし、父親のようになりたいと言い、父親の死を理解したいから人が死ぬテレビ番組が好きだという。そして「死」について考えていることを語る。それはロニーの心のせいいっぱいの吐露であったのだけれど、ミンはそれを不健康なこととして片付け、何で他の少年のように野球をしないんだと的外れなことを言って、ロニーが投げかけた問題をまったく受け止めずに寝てしまう。
 これが結局ロニーの悩みを深め、さいご自殺を図ることにつながるのだけれど、その知らせを聞いてもミンは「まったく理由がわからない」と言い放ち、しかもその前には、誕生日プレゼントに野球のユニフォームを買い、「きっと気に入ってくれる」というシーンもある。

 こうなってしまうのはミンが自分以外の人間をまったく理解せず、そのことにまったく疑問を持っていないからだと思う。そのような人に出会ってしまった周囲の人の悲劇、そしてそのように他人を理解しない人自身の悲劇、それをこの映画は描いている。
 現実にもそのように自分以外の人間を理解しない人は結構いるし、誰しも他人よりも自分のことに頭がいってしまい、他人を理解しようという努力を怠ってしまうことはある。しかし、その結果訪れるのは悲劇だけだとこの映画は言っているのかもしれない。(といってしまうと、嘘っぽくなってしまうが、そのような繰り返し思い出すことには意味があると思う)
 最後は、アイリスが母性を取り戻し、母親とはなれて息子と生きていくことを決意するという結末になる。現実にはそうあっさりはいかないだろうという気はするが、アイリスを主人公の座に引き戻し、多少でも希望のある結末にするにはこんな安易な結末にせざるを得なかったというところだと思う。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: アメリカ2001年以降

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