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巌窟の野獣

2003/4/26
Jamaica Inn
1939年,イギリス,98分

 
            
     
 
 イギリスのコーンウォール、海の厳しさを利用して船を難破させ、その乗員を殺し、積荷を奪う。そんな海賊じみた行為が行われている町に一人の女性がやってくる。その女性メリーは“ジャマイカ・イン”という宿屋をやっている叔母を頼ってやってきたのだが、実はその宿屋こそ海賊たちの根城だった…
 ヒッチコックイギリス時代最後の作品。最後だから手を抜いたというわけではないだろうが、なんだか全体的に造りが荒く、ヒッチコックらしからぬところもある。放映されるフィルムの保存状態も悪いのは作られたのが第2次世界大戦直前という時代背景のせいだろうか。
監督 アルフレッド・ヒッチコック
原作 ダフネ・デュ・モーリア
脚本 シドニー・ギリアット
    ジョーン・ハリソン
    アルマ・レヴィル
    J・B・プリーストリー
撮影 ハリー・ストラドリング
    バーナード・ノールズ
音楽 

出演 チャールズ・ロートン
    モーリン・オハラ
    レスリー・バンクス
    ロバート・ニュートン

 

 


巌窟の野獣

巌窟の野獣

 

 

 
 まず、話の設定がかなりありえない。「そんな、あほな」と思わず言ってしまうような場面がポロリポロリと出てくる。なぜそうなのかはわからないが、とりあえず、この映画がかなり少ない予算で作られたことは確かだろう。背景はほとんど書割、難破する船はミニチュア模型、しかもカット数は限られて、それを繰り返し使う。世界恐慌の時代、世界が戦争へと邁進する時代、映画にそんな金を使う余裕はなかったのかもしれない。だからヒッチコックもさすがにいい映画は作れない。それならあきらめてばかげた映画を作ってしまおうじゃないか。という発想だったのかもしれない。
 ばかげたといえば、地方検事の顔や格好もかなり不思議で、変な眉毛をしているし、言動もおかしい。この映画の本当の主人公は彼で、そこに何か現在の社会の危機のようなものを(期せずして)織り込んだのかもしれない。そのように考えないと、ラストにいたる物語の展開の仕方がなかなか不自然だし、何の話かわからなくなってしまう。

 という不思議な話だったわけですが、少ないお金の中で映像にこっていくというのはやはりあって、たとえば最初に文字で説明が出てきたあと、その説明が波に飲まれて消える。ただ消えるのではなくて、波にかき消されるというただそれだけの演出だけれど、このあたりにヒッチコックのうまさを感じる。
 ここ以外でも映像はなかなかこっていて、馬車が疾走するときのスピード感なんかもなかなかのもの。恐怖を演出するのはお手のものなヒッチコックだけに、こんなおかしな話でも時折恐怖を感じさせてしまう。
 いくらヒッチコックといっても作った作品全部が名作とは言えん、のだと改めて感じた作品ではありますが、ヒッチコックの作品にまったくつまらない作品はないとも感じたのでした。