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自殺サークル

2003/1/14
2002年,日本,99分

監督
園子温
脚本
園子温
撮影
佐藤和人
音楽
長谷川智樹
出演
石橋凌
永瀬正敏
さとう珠緒
宝生舞
嘉門洋子
ROLLY
余貴美子
麿赤兒
preview
 5月26日、54人の女子高生が手をつないで、「いっせいのー」といいながらホームから飛び込み自殺を図った。その同じ日、とある病院で夜勤中の看護婦のひとりが買い物に行ったまま帰ってこず、そのあいだにもう一人の看護婦は消え、買い物から帰ってきた看護婦も「じゃあ、いってくるわ」と警備員に言い残して窓から飛び降りた。警察は単なる自殺ブームと考えていたが、事態は徐々にそれでは収まらないようになっていく…
 日本映画界の鬼才園子温の撮った謎多きミステリー・ホラー。生々しいスプラッター描写の過剰さは笑いをも誘うが、拒否反応を起こす人も多いはず。この独特の世界観は多くの人に嫌われると思う。
review
 ここまで陰惨な映画はなかなかない。とりあえず、映像的にもスプラッターな感じが陰惨で、心理的にも出口のない暗がりにいるような感覚を催させる点で陰惨だ。普通はこれがどこかで転換し、ヒーローが現れるなり何らかの環境が変化することで明るい方向に変化していく。しかし、永瀬正敏はヒーローになりそこね、いつになっても転換点はやってこない。しかも、いつまでたっても終わらず、陰惨さはどんどんと強化されていく。
 そのような中でのスプラッターな映像の過剰さは逆に陰惨さと対立するように見える。大根もろとも自分の手をスライスしていく主婦を見るとき、そこには陰惨さはなく、B級ホラーを見ているときの薄ら笑いが顔に浮かぶ。ここで陰惨なのはその異常をこともなげに父親に伝える子供であり、妻が手を切り刻んでいる傍らでにこやかにテレビを見ている夫なのだ。
 人々が拒否反応を起こすと思われるスプラッターな映像だけがこの映画にとっての救いで、残りの部分はわたしたちの心の影の部分にばかり入り込んでくる。その暗さ、陰惨さを作り出している「自殺クラブ」なるものに対抗するはずの警察もまたその陰惨さから逃れることはできず、逆にそれに巻き込まれ、われわれの絶望を増す役割しかしない。

!!!!!!!!!!
この辺りからネタばれるので、見てない人は読まないほうがいいかと思われます
!!!!!!!!!!

 特に、石橋凌の家族が死に(その原因も明らかにはならない)、自信も自殺を遂げるシーンでその絶望は頂点に至る。主人公の一人と捕らえられていた石橋凌を殺すという『サイコ』的な手法は彼らにヒーローとしての可能性を探っていたわれわれに致命的な絶望感を与える。そして、何度も訪れる転換のチャンスもなんだかよくわからない理由によって無碍にされ、映画はただただ陰惨に終わりを迎えていく。
 結末も、どうも私には解けなかったのですが、とにかく決して明るい結末ではないことは確か。なんだかうやむやにしたまま、明確な明るい先行きが見えないまま終わってしまう。このように徹底的に観客を追い込んでしまえる園子温はやはりすごい。
 社会的には悪影響を与えそうで、たたかれそうな気もするけれど、幸か不幸か社会敵意話題を呼ぶほどメジャーな作品ではなかったので、特に問題はならずにすんだ。

もどります
!!!!!!!!!!

 とはいえ、こういってしまうと陳腐になってしまうけれど、底流に流れるのは愛のようなもの、それを欠いてしまった不安のようなものである気がする。陰惨さが絶望の表出としてあるのではなく、不安感の表れとしてあるので、何か共有できるものがあり、見終わってくらい気分に落ち込むということもないと思います。
Database参照
作品名順: 
監督順: 
国別・年順: 日本90年代以降

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