Bella Martha
2001年,ドイツ,105分
監督:サンドラ・ネットルベック
脚本:サンドラ・ネットルベック
撮影:ミヒャエル・ベルトル
音楽:キース・ジャレット、アルヴォ・ペルト、デヴィッド・ダーリン
出演:マルティナ・ゲデック、セルジオ・カステリット、ウルリク・トムセン、マクシメ・フェルステ

 ハンブルクのレストランでシェフとして働くマーサはすばらしい料理を作るが、スタッフには厳しく当たり、あまり打ち解けることもない。家に帰ってもしっかりと料理を作るが、食は進まず拒食症気味。休日に遊びに行くこともない。マーサを「街で2番目のシェフ」と評する友人でもあるオーナーの命令でセラピーにも通っている。そんなマーサのところに姉が交通事故死したという知らせが入る…
 女性監督であるサンドラ・ネットルベックが等身大のキャラクターを主人公にロマンティックな映画を撮った。ドイツを始めたヨーロッパでヒットし、さらにアメリカでもヒットした作品。女性ならほぼ全員が満足するでしょうという作品。料理もおいしそう…

 私はこの映画は好きですが、男性の中にはまったくもって面白くないという人も結構いるのではないかと思います。それに対して女性はほぼ全員が気に入る映画だとも思います。
 なんといってもこの映画は徹底的にロマンティックな映画。心を閉ざしていた主人公が徐々に心を開き、しかも成長していくわけですが、そこに一人の男性が現れ… とラブストーリー的な部分とシリアスな人生ものというか、ラブストーリーの枠からはみ出た部分でもちゃんと展開があり、それと主人公の心情がうまく結びついて、観客の共感を呼ぶようにできている。音楽の使い方なんかも、男っぽい観客には甘すぎる感じがするとは思いますが、映画にフィットした非常にロマンティックな音楽。それを奇をてらわずに盛り上がる場面にドンと流すので、それはもう盛り上がりをあおること請け合いです。とくにキース・ジャレットのナンバーが効いています。
 という感じですばらしいロマンティシズムの映画ということなので、展開の妙とかハラハラ感なんかはないわけです。「こうなって欲しい!」と思うとおりに物語りは展開する。マーサが運転し、リナが後部座席に座るというシーンが同じショットで2度出てくるなど映画の構成もわりにきちっとしていて、物語に入り込めるように作られているのも非常にうまいわけです。物語に入る込むことができて、あとは思うとおりに物語が展開してくれれば、それは一種の御伽噺の世界になるので、そこに浸るのは非常な快感。瞳を輝かせながら最後まで一気に… となるのです。これは皮肉でもなんでもなく、そのように観客を引き込める映画をきちっと作ったのはすごいことだと思うわけです。
 ただ、私はわずかながらロマンティックすぎると感じたわけで、それは男っぽさに価値を置いているような世にいる男性には受け入れがたい世界だということも意味しているのだと思います。

 そして、料理もとてもおいしそう。料理をおいしそうに撮るにはライティングなんかの工夫が必要なので、厨房という動きのあるところで料理をおいしそうに見せるというのはなかなか難しいと思うのですが、この映画の料理はとてもおいしそう。見終わったあとフレンチかイタリアンが食べたくなるのは男性も女性も一緒でしょう。

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